HOME > BAPインフォメーション > BAP 一周年記念シンポジウム 【アフターレポート】
去る2008年10月4日(土)、当BAPサイトの公開一周年を記念し、国際連合大学に場をお借りして、シンポジウムを開催いたしました。これまではバーチャルなWebサイトだけで展開してまいりましたが、日頃ご覧いただいているみなさまとの交流の場をつくることも含めて、一周年を機に、リアルな空間でも働きかけを始めようと考えた次第です。
当日は、エジプトより現アレクサンドリア図書館のセラゲルディン館長ほか、各界の識者のみなさまにご参加いただくことができました。そして国連大学という知の場で、BAPのコンセプトである「多元創知」をテーマに、多元的な考え方の魅力と必要性を、大いに語り合っていただきました。また、このシンポジウムを契機として、当日、古代の叡智の象徴であるアレクサンドリアの地に再建されたアレクサンドリア図書館と、現代の叡智が集まる国連大学との間で、協力協定が取り交わされました。
その一部をWeb上で、簡単にご紹介させていただきます。当日の映像や、ここから派生したコンテンツなども改めて載せていきたいと考えておりますので、ご期待ください。

国際連合大学 5階 エリザベス・ローズ国際会議場
【共催】
アレクサンドリア図書館コンソーシアム事務局 国際連合大学
【期日】
2008年10月4日(土) 11時00分〜17時30分
【会場】
国際連合大学 5階 エリザベス・ローズ国際会議場

黒川清(アレクサンドリア図書館理事)
人類は、過去の知識から注意深く学ぶときのみ学ぶことができるものです。アレクサンドリアは、古代に於いても、そして現在に於いても、知恵や知見を共有する場所となっています。将来の世界のために、われわれの時代の問題を解決するために、勇気を持って小さな一歩を踏み出しましょう。

アレクサンドリア図書館長から記念品贈呈
JAXAの衛星「大地」からのアレクサンドリアの衛星写真を黒川清氏より、アレクサンドリア図書館のセラゲルディン館長に贈呈していただきました。
(写真は卓上用で、このほかにポスターサイズのものをご用意しました)

コンラッド・オスターヴァルダー Konrad Osterwalder(国際連合大学学長)
きょう、この日に世界で最も歴史のある学習・思考の機関であるアレクサンドリア図書館と、最も若い学習・思考の機関である国連大学とが、パートナーシップの合意書を取り交わせるのは大変素晴らしいことだと思っております。
われわれの将来の社会は、サービス主体の社会、知識社会になると言われて久しいものです。しかし、それ以上に、わたくしはグローバル化と多様化によってもたらせされる影響の方が大きく、持続可能な世界に向けてのわれわれの取組みのもつ意味の方が大きいと考えています。
持続可能性はモラルの問題でもあり、将来の人類に向けて、過去が、現在が、試されているとも言えるでしょう。犠牲も伴うかも知れません。持続可能性に於いては、基本的な意識の変革が求められているのです。
その実現のためには、科学的な仕組みや、政治的な仕組みもつくっていく必要があります。そういった文脈から、知の創造の場としての、国連大学の役割も考えていかなければなりません。
われわれの社会がグローバルなレベルでどう協力していくのか。持続可能性という目的を達成するためには、狭い政治的、経済的な見方と矛盾しても、為すべきことを進めていく必要があります。話し合うだけでなく、行動を起こしていきましょう、「持続可能な世界のために」。

ワリード・マハムード・アブデルナーセル Walid Mahmoud Abdelnasser(エジプト・アラブ共和国 駐日大使)
きょう、1周年記念シンポジウムに来られたこと、国連大学に来られたことに感謝いたします。ここにわたしたちが集まったことは、プロジェクトがこれだけ達成できたこと、先見の明があったこと、根気強さがあったこと、友好関係によって支えられてきたことを示しています。
このようなシンポジウムが開かれるのは、2008エジプト日本科学年の精神とも一致しているでしょう。また、2007年11月には、アレクサンドリア図書館館長のセラゲルディン博士のご指導のもと、「日本アラブ会議」が開かれました。テーマは、「新しい夜明け。アラブが東洋を見ている」でした。250人の政治家、経営者、学者、科学者、経営者、芸術家など各界の代表者が集まって共通の利益について協議し、日本とアラブ社会との協調の方法について話し合いました。
政治、政策外交、経済、貿易、文化、科学技術、環境など、日本とアラブ間の歴史のなかでもランドマーク的なできごととなりました。そして、多面的、戦略的提携関係を両者で結んでいく契機になったのです。
このように、わたしたちは、それぞれの努力を結集することによって、さらに多くのことを達成することができます。アレクサンドリア図書館の活動をさらに拡大し、そしてその任務を果たすことで、人類全体のメリットとなるように尽くしていくことができると思います。

ハニー・ヘラル H.E. Dr. Hani Helal(高等教育相兼科学研究担当国務相)
われわれのアレクサンドリア図書館は、セラゲルディン館長のもと、あるセオリーを持っています。それは、知識を伝達するだけでなく、知識を生産し、それによって科学者、研究者、人々を結びつけ、この文明間のさまざまな討議や意見交換や、出会いが促されるような活動を成り立たせていくということです。わたくしは、この使命をさらに発展させていきたいと考えております。
エジプト政府を代表して申し上げれば、今年(2008年)は、日本とエジプトの科学技術年ということもあり、一層の科学技術外交ができるようにしたいとも思います。また、こうした取組みにより、これまで成し遂げてきたものがさらに展開し、認知され、アレクサンドリア図書館と国連大学の間でパートナーシップの合意書を結ぶことにも繋がりました。
エジプトと日本、日本とアラブ諸国との間の友好関係に感謝し、世界各国が平和裡に暮らせることを心から祈っております。


イスマイル・セラゲルディン Ismail Serageldin(アレクサンドリア図書館館長)
みなさまを歴史の旅へご招待しましょう。
古代から21世紀まで、図書館の意義が変遷してきたということをお見せしたいと思います。われわれの図書館は、まだ5歳。きょうは、日本での初めての誕生日です。将来に向けて、すべての知識をあらゆる人に届けるために、わたしたちのやるべきことはたくさんあると考えております。
この休み時間に、アレクサンドリア図書館と国連大学の間で、パートナーシップの合意書がセラゲルディン館長とオスターヴァルダー学長により取り交わされました。
BAPのメンバーも、この締結式に立ち会わせていただきました。

BAP(Bibliotheca Alexandrina Project)設立と歩み
Webサイトこそ古代アレクサンドリア図書館が目指していた知の集積をして、それを提供できる「場」でもあったのです。
そこで、新旧2つのアレクサンドリア図書館のページのほかに、多元主義的に、いろんな意見を持った方が対話できる場を提供していこうと考え、ネットフォーラムを開始しました。また、将来はリアルな場所でのシンポジウムなども開きたい。その第一歩ということで、今回のシンポジウムを開催させていただきました。
つまり、現状のサイトには、古代アレクサンドリアのページ、現在のアレクサンドリア図書館のページそして、未来に向けたページの3つが合わさっているのです。
このサイトのアクセス数は、開始時期に上がって、以後更新は僅かなのですが、殆ど落ちていないという珍しい状況となっています。これもみなさまのお陰と感謝しておりますが、もうひとつブレークをしたいとも考えております。これからもご支援のほど、よろしくお願いいたします。


周藤芳幸(名古屋大学大学院文学研究科教授) / 葛西秀樹(株式会社大林組 設計本部 設計部 課長) / 松下尚嗣(株式会社大林組 設計本部 インタースペース部) / 勝山里美 (株式会社大林組 広報室 『季刊大林』 編集長)
司会/後藤光弥 (DNA Media株式会社 エクゼクティブ・プロデューサー)
季刊大林No,50の「アーカイヴズ」で、名古屋大学の周藤先生と一緒に古代アレクサンドリア図書館をCGで再現するプロジェクトに取り組まれた大林組のみなさん。その制作時には、当BAPサイトも参考にされたとのことでした。そこで、どのような資料から、建築的に可能なものとして、古代アレクサンドリア図書館の再現にいたったのか。季刊誌には、載っていない途中の試行錯誤も含めて、開場のみなさまにも、その知的探求を追体験していただくことにしました。
周藤先生による、考古学・歴史学的なアプローチと、大林組のみなさんによる建築学的なアプローチ。両者が時に寄り添い、時に鬩ぎ合って最終的な再現図が生まれたのです。これも、きょうのテーマである「多元創知」の一例だと思います。
ムーセイオンが中心であること
ギリシア風であること
当時として、そんなに変わった建物ではなかったこと
シンメトリーな構造ではなかったこと
海向きであったこと
歩ける場所であったこと
など、様々なポイントを巡って、楽しいお話しと図案を拝見することができました。
この部分については、2010年春に、まとめ方を変えて、Web上にも掲載させていただきます。ご期待ください。



左: 周藤芳幸(名古屋大学大学院文学研究科教授) / 右: 高橋一生(国際連合大学客員教授)

左: 関沢英彦 (東京経済大学コミュニケーション学部教授) / 右: 寺門和夫(株式会社 サイエンスウェブ代表)

左: 紺野 登(多摩大学大学院教授) / 右: 司会/後藤光弥 (DNA Media株式会社 エクゼクティブ・プロデューサー)
グローバリゼーション全盛の時代。その利点もありますが、それだけでは解決できない問題も多く、21世紀の知的手法が求められています。そんななか、古代アレクサンドリア図書館に見られた、寛容で多元的な知的創造から、わたくしたちは多くを学ぶことができるのではないでしょうか。いま、これを「多元創知」と名付け、各界で同様な試みをされている識者のみなさんからお話しを伺うことにしました。その中から、多元的なものの考え方の魅力や、価値、実践のコツなどについて、パネルディスカッションを展開させていただきました。
最初に、パネラーのみなさんから、お一人ずつ、次のようなお話しをいただきました。
周藤芳幸先生
「フィールドの多元創知」学際的な人たちが生活を共にする場として
高橋一生先生
市場経済とユニークな農村の在り方両者を満たす第3のアプローチが必要一元性と多元性のコラボレーション
関沢英彦先生
生活者としての発想(消費者として見ているだけでは見えてこない)個人の中の多重性が他者と交わるための前提条件
寺門和男先生
サイエンスの最前線は国際協力国内での活用には個別性がある
紺野登先生
不確実な時代 → 分析的思考から多元的思考へグローバルなイノベーションセンターを
各パネラーからのお話のあと、次のようなテーマについてディスカッションをし、さらに内容を深めることができました。
「場」の必要性
他者と交われる場をつくれるかどうかコミュニケーションを取ること場の設定の仕方をつくる
日本という「場」について
言挙げをしにくい日本合意生成の作り方の違い知の作り方に実践感覚を
「場」を活かす力
異質性があること人間力が最重要
多元創知は、「多から多」を生み出すもの。そのためには「場」が必要ですが、ただ「場」があればよいというものでもありません。「場」の中に豊かさがあってこそ、多元的な知の創造が可能となることを忘れずにいたいと思います。
そして、BAPも豊かな「場」を提供できるところとして、活動を続けて行くつもりです。
本日は、長時間、ありがとうございました。今後も、機会をみつけてシンポジウム等を展開して参ります。ご期待ください。
構成編集: 後藤光弥(DNA Media 株式会社)
10:30 |
開場 |
|---|---|
11:00 |
開会 |
11:05〜11:25 |
シンポジウム開催にあたって 黒川 清(アレクサンドリア図書館館理事) |
11:25〜11:45 |
「国連大学の新しい方向と文化の多様性」 コンラッド・オスターヴァルダー Konrad Osterwalder(国連大学学長) |
11:45〜11:55 |
メッセージ ワリード・マハムード・アブデルナーセル Walid Mahmoud Abdelnasser (エジプト・アラブ共和国 駐日大使) |
11:55〜12:05 |
メッセージ ハニー・ヘラル H.E. Dr. Hani Helal(高等教育相兼科学研究担当国務相) |
12:05〜13:00 |
基調講演 「パピルスからDVDへ」 イスマイル・セラゲルディン Ismail Serageldin(アレクサンドリア図書館館長) |
13:00〜14:00 |
休憩 |
14:00〜14:15 |
BAP(Bibliotheca Alexandrina Project)設立と歩み 木川明彦(株式会社ネットアドバンス) |
14:20〜15:30 |
「CGでよみがえる古代アレクサンドリア図書館」 ・周藤芳幸(名古屋大学大学院文学研究科教授) ・葛西秀樹(株式会社大林組 設計本部 設計部 課長) ・松下尚嗣(株式会社大林組 設計本部 インタースペース部) ・勝山里美(株式会社大林組 広報室 『季刊大林』 編集長) 司会/後藤光弥(DNA Media 株式会社 エクゼクティブ・プロデューサー) |
15:30〜15:50 |
休憩 |
15:50〜17:00 |
パネルディスカッション 多元創知 ・高橋一生(国際連合大学客員教授) ・周藤芳幸(名古屋大学大学院文学研究科教授) ・紺野 登(多摩大学大学院教授) ・寺門和夫(株式会社 サイエンスウェブ代表) ・関沢英彦 (東京経済大学コミュニケーション学部教授) 司会/後藤光弥(DNA Media株式会社 エクゼクティブ・プロデューサー) |
17:00 |
閉会 |
(以上、敬称略)