HOME > BAP日本語版へのメッセージ > (財)中近東文化センター理事長ごあいさつ
エジプトのアレクサンドリアには、かつて『知恵の殿堂』と呼ばれ、最盛期には50万巻とも70万巻とも言われる蔵書を誇る大図書館が存在しました。紀元前3世紀初頭にプトレマイオス1世(ソーテール)により創建されたこの図書館と、併設された研究機関ムセイオンには、数学者ユークリッド、医学者ヘロフィロス、歴史家マネト、科学者アルキメデス、地理学者ストラボン、哲学者フィロンなど驚くべき大学者が集まり、その学問を確立したのでした。
この偉大な図書館は紀元前49年、かのユリウス・カエサル(シーザー)によって焼き払われてしまいました。クレオパトラと組んで、エジプトの征服を企てたシーザーは、彼女の夫であるプトレマイオス13世の艦隊による包囲を断ち切るために、敵艦隊に放火しました。その火が広がって大図書館をも類焼させてしまったのです。<妹の図書館>と呼ばれた後世の図書館も、389年にローマのテオドシウス帝の勅令で取り壊されました。
しかし、この人類の叡智の集積である図書館は、消失した後も決して人々から忘れ去られることはなく、時代を超えて語り継がれてきました。そして2002年10月、次世代に継承すべきものとして、新しいアレクサンドリア図書館が開設されたのです。
世界でも類を見ない太陽円盤を象った斬新な図書館は、ユネスコ(国連科学教育文化機関)の援助により建設されました。日本も技術装置の提供などの援助を行っています。総床面積85,405m2、高さ33m、11階建てのこの図書館は、単に図書館としてだけでなく、科学館、保護修復研究所、会議センターその他多くの施設を含む文化複合体としての役割を担っています。
いまだに戦火の絶えない中近東地域で重要な鍵を握るアレクサンドリアに、1600年の時を経て復活した図書館が、本当の意味での『知識の殿堂』として、争いを超えた人類の叡智を次世代へ伝えるべく、大切に維持され、かつ発展することを、そして、シーザーの愚を繰り返さないことを願ってやみません。